第七章 戦争の中の兵士
「こいつらも同じだな」
比較的損傷が少ない遺体を観察すると、あのフード男と同じように、無機物の補正痕があった。 どうやら、ティルの推測は当たったようだ。
「うーん。それにしても、悪趣味だよね。ここ」
周囲を見回しながら、ティルは言う。
確かに、艦内の内装はまともな状態とは言い難かった。
おそらく、戦争時に破損した箇所をナノマシンが有り合わせの素材で補修したのだろう。
様々な素材が融合し、絡み合い、構成された空間は、見ていて気分が悪くなってくる。
時折、人間だったものが壁の素材に使われている事もあり、気分の悪さに拍車をかけた。
「〈捨てられた技術〉になるわけだ」
悪趣味な壁を小突く。
壁から生えている顔が苦悶の表情を浮かべ、キームを見る。
「……生きてやがるのかよ。ったく」
顔の額に、銃弾を打ち込む。
額に穴を開け、顔から意識が消えた。
「気味が悪いよね。ほら、こんなとこ、早く進んで、早く終わらせようよ。私が前に出るから、キームは後ろからくる敵をお願い」
ティルは突撃銃を構えると、先に進み始めた。
さっきの戦い方を見る限り、前を任せても問題ないだろう。
それに、一刻も早くここから出るには、突撃銃を持つティルに前を任せたほうが効率的だ。
「分かった。気をつけろよ」
「キームもね」
額の汗を拭い、後ろに集中する。
新手は即座に現れた。
軍服を着た、ラーグリスクの兵士。
その数6つ。
遮蔽物に隠れようとせず、不用意に全身をさらけ出している。
うかつなやつらだ。
心臓あるいは頭蓋に、的確に銃弾を打ち込んでいく。
6人のラーグリスク兵は、武器を構える事も無く息絶えた。
「うわぁ!」
ラーグリスク兵が出てきた通路から、悲鳴が聞こえた。
どうやら、仲間がいたようだ。
増援を呼ばれては面倒だ。
死体を飛び越し、通路へ。
7人目のラーグリスク兵は通路にへたり込んでいた。
仲間の死を前にして、腰を抜かしたらしい。
今回の新手、軍人としての質がかなり悪い。
一気に近づき、銃口を7人目の額に当てる。
引き金を引けば、確実に殺せる。
だが、そこで戸惑いが生じた。
このラーグリスク兵は少年だった。つまりは、少年兵。
新手の、軍人としての質が悪いわけだ。おそらく、ろくな訓練も受けずに戦場に送られてきたのだろう。
抵抗する術を持たない者を撃つのは、気が引ける。
「あぅああぁ……」
少年兵は震えている。目の焦点も合っていない。
おそらく、正気を失っている。これなら、援軍を呼ばれる心配はないだろう。
殺す必要はない。そう判断した。
銃を引き、背を向ける。
パンと、背後で乾いた音がした。
背中に痛みが走る。
振り返ると、少年兵が銃を構えているのが見えた。
少年が持っているのは、白い装飾銃。
装飾銃は式典などに使われる、実践には向かない代物だ。
戦場では、御守り程度の意味しか成さない。
少年兵は、震える指で引き金を引く。
正気を失いながらも、引き金を引く。
放たれる弾は、全てキームに命中した。
命中はしたが、防弾ベストを貫通するほどの威力はなかった。
「……戦争は、終わっている。もう戦うな」
少年兵に語りかける。
「うう、うぁあぁぁああ」
少年兵は、引き金を引き続けた。
弾が切れても、引き金を引き続けた。
カチリ、カチリと、むなしい音が響く。
壊れた少年兵は、引き金を引くことをやめようとはしなかった。
「……もう、休め」
少年兵の額にむけて、キームは引き金を引いた。
引き金を引く音が、止まった。
キームは少年兵に背を向けて、その通路から離れた。
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