第零章 黒髪の少年
都市と都市をつなぐ街道。
そこは、さまざまな人間が通る場所だ。
金持ち。女。子供。旅人。商人。他にも色々な奴が通る。
そして、俺の仕事は、街道を通る奴らから通行料を取ること。
逆らった奴は消していく。
当然だが、俺の仕事は行政に認められていない。
要するに非合法。
だが、摘発はされない。
理由は簡単。ここが街の外だからだ。
街の外のことに関して、行政は干渉しない。
おかげで、俺は仕事がやりやすい。
さて、仕事をするとしよう。
遠くに人影が見える。
17、8歳くらいのガキが一人。
髪は短めで、黒い。
ここいらで黒髪というのは珍しい。旅人だろう。
体型は中背中肉。
服装は簡素で、全体的に小ざっぱりしている。
大金は持っていないだろうが、小金は持っているに違いない。
一応、武装はしているようだ。腰に拳銃が一つ。ナイフが一つ。他には何もない。
カモだ。
愛用の突撃銃を構え、隠れて待つ。
ガキは一定の歩調で歩き続け、俺の前を通る。
「待ちな!」
ガキが通り過ぎた時点で、声をかける。
ガキは何も考えずに振り返るだろう。
そこで銃を目にして、動けなくなる。
それがいつものパターンだ。
だが、今回は違った。
ガキが振り返る。
ガキは俺を見る。
途端、俺は動けなくなった。
ガキの目が、怖かった。
奴の視線は、鋭いわけでもなく、冷たいわけでもない。
逆に、穏やかなわけでもなく、温かいわけでもない。
それは何でもなかった。
何の感情も映さない、ただの眼球。
とても、この世のものとは思えない。
それはまるで、伝説の死神を思わせる。
死神は、笑わないのだという。
笑わずに、悲しまずに、何の感情もなく、人を殺すのだという。
ガキの手には拳銃が握られている。
ガキは緩慢な動作で、俺の心臓に狙いを定める。
いや、本当に緩慢なわけではない。
俺の全神経が、ガキの挙動に集中しているから緩慢に見えているだけだ。
ガキは引き金を引く。
銃口から、小さな真鍮の塊が吐き出される。
それは、非常にゆっくりとした速度で俺の体に突き刺さった。
回転する弾丸が体内を引き裂きながら進んでいく。
視界が真っ赤になる。
心臓がつぶされる瞬間、逆流した血液によって眼球の毛細血管が破裂したのだ。
俺は、死神に殺された。
「賞金首、ケイルバンド。あなたの首を貰い受ける」
キームは短い黙祷を捧げ、たった今絶命した賞金首の首を切り落とした。
旅費を調達するために受けた依頼。
依頼主は、ケイルバンドによって殺された者の遺族。
キームは、赤い布で首を包むと、街に向かって歩き始めた。
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